相続事例①

「兄弟は相続でもめることが多い」

<事例>

親が高齢となり、同居していた兄が常時介護をしていた。親が亡くなり、これまで親の面倒を一切見ていなかった弟が、兄と同じ相続分を主張してきた。兄は、自分のお金で介護医療費を支払っていたこともあり、弟よりも多く財産を相続したかった。両者の主張がまとまらず、結局兄と弟が均等に分割して相続することとなった。

<対策と解説>

核家族化と高齢化の進展により、上記の事例が多く見られます。
この場合、相続発生前に遺言書を作成しておくことにより、こうした紛争を回避することができる場合があります。遺言書があれば、まずは遺言書通りに相続財産を分割することになります。ただし、遺留分という権利が相続人にはあります。(上記の事例の場合は、弟が民法に規定する法定相続分の半分を請求することができます)
そのため、たとえば不動産を確実に兄が相続したいという希望があれば、遺言書に遺留分の請求に応じる財産の順序をあらかじめ記載しておくとよいでしょう。
また、生命保険を活用することも有効です。死亡保険金は、相続財産ではないため、保険契約で定められた受取人に、他者の関与する余地がなく、支払われるためです。

相続事例②

「不動産は相続財産の分割をする上で、厄介なもの」

<事例>

父は複数の不動産を所有した状態で亡くなった。相続財産は、この複数の不動産とわずかな金融資産であった。複数の相続人がこれらの財産を分割することになった。
不動産の価値は、それぞれ様々であり、かつ金融資産がわずかであったため、公平に分割することが困難となった。相続人の話し合いがまとまらず、いくつかの不動産を売却して現金化し、現金を公平に分割するに至った。

<対策と解説>

不動産は、値段が様々であり、容易に分割することが困難なため、相続財産の中では厄介なものといえます。この場合、予め不動産を贈与しておく、遺産分割に備えて測量、分筆等の準備をしておく、遺言書で取得者を決めておく等のいくつかの対策が考えられます。
不動産を共有で相続することもできますが、いずれ売却等をするときには、その所有者全員の同意が必要となるため、手続きが煩雑となってしまいます。
相続財産が何か、どのように分けるかを考えて生前に対策を立てることが大切です。

相続事例③

「自社株式の相続による倒産危機!」

<事例>

父は設立した会社の株式を所有した状態で亡くなった。会社は業歴も長く、昨今の景気低迷で業績は下がっていたものの、過去の蓄積があった。会社の株式という相続財産の評価額が高いため、多額の相続税の納税をすることとなったが、納税に充てる資金が不足していた。会社は未上場会社なため、株式を売却する市場もなく、父が所有していた会社の敷地の一部を売却することとなった。これにより、事業規模が縮小し、会社の存続を危うくする結果となった。

<対策と解説>

自社株式は、相続評価額が大きくなることがあります。また、上場株式と違い、すぐに市場で売却できるものではないので、流動性の乏しい資産です。この場合の対策としては、生前に自社株式の相続評価額を算出しておく、自社株式を生前贈与しておく、自社株式の相続税評価額を引き下げる対策を行う、納税資金を準備しておくなどが考えられます。